2001年1月21日日曜日(JST・EST) [出張1日目:日本→USA] |
昨日の雪はとりあえず止んで、今朝はひたすら道路がカチカチに凍っていた。ハイカットの靴底の彫りが深い靴でも駅までの間に何度転びそうになったかわからなかった。
駅に着いた時点で携帯電話とPHSを家に置いてきてしまったことを思い出す。まあいい、何とかなる。どうせもうすぐ日本とはおさらばだから関係ない。
しかし、京成船橋の駅で切符を自動改札に置き去りにしたのは良くない。いきなり構内放送されて気まずい思いをする。
成田空港に着く。
羽田空港を見慣れている私にとって、成田はちょっとイケていない印象を与えた。
京成の成田第2ターミナルの駅を降りた途端に警察のチェックのカウンターがある。
しょっぱなから背中にしょっているリュックをかき回してパスポートを探すのはめんどくさいので、財布の中の免許証で済ます。
あのおまわりさんの大群には意味はあるのか?威嚇効果は疑いの余地はないが。
でもデカイ。地下の駅からエスカレータを乗り継いで3Fの出発ロビーの入り口に立った私を呆然とさせるには十分だった。
こうなると完全に「おのぼりさん」状態である。
まず何をするのか?
JALのカウンターでチェックインするのか?両替をするのか?出国手続きをするのか?その他に何かする事があるのか?
パンパンになったリュックと頼りなくガラガラ言うバックを引きずりながらウロウロする。
フロアの見通しは利くのだが、パッと見た感じ、正面のチェックインカウンターのボディーチェックを通ったらもう戻れないような印象を受けたので、わざわざ一番奥の両替カウンターに行ってから、一番手前のチェックインカウンターに戻る。
本当はチェックインしてからでもそのままの順路で両替→出国に行けたのに……。知らない事は罪である。
両替カウンターでハッと気が付く。
「財布は2つ持ってくるべきである」
両替前の日本円を入れておく財布と旅行中の外貨を入れておく財布の2種類が用意されていると、「お!アイツは旅行慣れしてるんだな」と周りを納得させる事ができる。
成田空港の売店でパスポートカバーを買ってしまうような素人さんは、日本円はパスポートカバーのビニールにくるんでカバンの奥に大事にしまっておきましょう。帰りに日本円が全く無いと、帰りの電車にはドルでは乗れませんよ^^;
出国手続きといっても別にたいした事はない。
ただ用意されていた出国カード1枚とパスポートがあれば簡単に終わってしまう。別に悩むほどの事じゃない。
いかにもお役所的にハンコをバンバン押してくれて終わりだ。
会社がビジネスクラスのチケットを取ってくれたおかげで、成田空港のエクゼクティブラウンジを利用する事ができた。
エレガントな感じで、ノートパソコンを置いて仕事をするためのスペースや、飲み放題のバーがあった。
まだ酔うのには早いので、コーヒーを飲みながら文庫本で時間をつぶす。
大体うちの会社の人間はここでまずタダ酒を飲みまくってベロベロになるのが常らしい^^;
窓際の席からは飛行機を見るのに最適である。
飛行機自体はよく乗っていたのでめずらしい事ではないが、日本を飛び立つと思うとちょっと感慨深いものがある。
成田を離陸して旋回すると、眼下に九十九里浜のきれいな海岸線が見えた。が、後はそれっきり海の上……。窓際のメリットはないと思われる。飛び立って日付変更線を飛び越えるまでに日が暮れて真っ暗になるし。
ある意味、通路側の席は隣の人が寝てしまっても気軽に立てるので便利かもしれない。良かった、通路側で。
11時間のフライトは実に退屈だった。
シートでビデオを見たり、ゲームをしたり、音楽を聴いたりももちろんできるのだが、成田を飛び立ってすぐに食事が運ばれてきた。
考えてみるとこれは時差ぼけを少しでも軽減するための配慮なのだろうが、日本時間で14:00ぐらいなのにディナークラスの食事が出てくる。機内食にしてはプレートが2枚もあるような豪勢な食事である。前菜とスープのプレートでお腹いっぱいになってしまった私は2枚目のステーキのプレートがあることを知らず、チョコッと食べただけでギブアップしてしまった。もったいない。
時間的にはつらいだろうけど、アメリカ行きの飛行機に乗る事があったら直前の食事は抜いてくる事をお勧めする。
ちなみに、この後は日本時間の9時ぐらいにおにぎりが出てくるだけで、他に食事は出てこなかった。空腹で死にそうだった。^^;
機内映画は「リプレイスメント」「コヨーテアグリー」「オータム・イン・ニューヨーク」「タクシー2」などがオンデマンドで楽しむ事ができる。自分の好きなタイミングで見始めることができるし、トイレに行きたい時には一時停止しておけるので、非常に便利だった。
ちょっと絵が汚いのと、時々画像と音声がレコードの針が飛んだようになるのが気になるが、ビデオオンデマンドシステムもここまで来てるのかという感じがした。
ちなみに私は「リプレイスメント」と「タクシー2」を最後まで見て、「コヨーテアグリー」を途中まで見た。
座席の横から液晶モニターを引っ張り出して見るのだが、ちょっと目が疲れた。
テレビは程ほどに……。
それとは対照的に、音楽番組はちょっと貧弱だった。
チャンネルはそれなりにたくさんあったのだが、実際に若者の私が聞きたくなるようなチャンネルは「JPOPSコンテンポラリー」と「ワールドミュージックヒッツ」の2チャンネルぐらいで、それも大体50分ぐらいの番組なのですぐに聞き終わってしまう。
まあ、もっと貧弱なゲームよりかは幾分ましなのかもしれないが。
そんなこんなで色々機内でのイベントはあるのだが、メインの仕事は「寝る」事である。
と、いうか、降り立つ現地の時間に生活サイクルを合わせないといけないので、とにかく寝るしかない。機内の電気もすぐ消されてしまう。
でもさすがに昼寝の時間に何時間もグウグウ寝れるものではない。
なんだかんだで私は機内で5~6時間は寝たが、液晶テレビでチェックできる残り時間と飛行コースの残りがなかなか減っていかないのにはげっぷが出そうだった。
地図の上では、飛行機は逆U字型を描いて飛んでいく。
成田から北上して、アラスカのアンカレッジ上空、カナダ上空を飛んで、五大湖のほとりのシカゴに着陸する。
カナダ国境をアメリカに越えるあたりで夜が明けてきた。窓の外にはどえらい数の小さな湖が見える。朝日に輝いている。
シカゴに近づくと大きな湖が見えてきた。それを一度突っ切って、正面にシカゴの市街地を見ながら町を突っ切って、シカゴ郊外のオヘア空港に着陸する。
シカゴで飛行機事故が起こる時は、シカゴが壊滅する時なような気がする。
朝のシカゴ空港は静かだった。空気がとても冷たい。
あらかじめ会社の人に教えてもらってあった手順どおりに行動する。
飛行機を降りたら入国手続きをする。昔のハンディーカムの「パスポートサイズ?」の場面と同じようなブースに順番待ちをする。
入国の係官は朝早いせいもあるのか、ちょっと愛想が悪かった。日系人らしい係官の人が、「〇〇農協のツアーの方いらっしゃいますか?」「留学生の方はいらっしゃいますか?」と列の間を歩き回っていた。
私の番の時は「何でアメリカに来たの?」「研修のために」「そう」それだけで通されてしまった。
アメリカへの第一歩なんだからなんかもうちょっとあっても……ねえ……。やけに無感動だった。
入国審査を抜けた後で預けてあった荷物を一旦受け取り、通関手続きをする。
農作物を持っていなくて、農場で働いた事がなくて、生物を持っていないで、大量のタバコやアメリカ国内で売りさばくものを持っていなければただカードを提出して終わりになってしまう。実に形式的だ。
税関を通ると、乗り継ぎのためのアメリカ国内線のチェックインカウンターがある。
Unitedのカウンターを探してチェックインを済ませる。さっき受け取った荷物をまた預けてリュックひとつになる。
そこから実際の国内線出発ロビーまでは空港内モノレールに乗って行くらしい。
モノレールに乗ると、いきなりとんでもないスピードで走り出す。容赦なくスピードを出して飛んでいくが、なかなか着かない。
国際線の降り口が確か5番ターミナルビルで、Unitedの搭乗ロビーが1番ビルなので、まあ端から端までモノレールに乗ったわけだが、まあ広い。昔の羽田空港から浜松町ぐらいまでの感覚だ。
座席はなく、代わりに荷物を乗っける棚がある。
なぜか空港の建物内部は禁煙・撮影禁止だったので、1番ターミナルビルの外に出た所で11時間ぶりの一服と、撮影。
モノレールが見えるかな?シカゴ9:00am
座ったままだったのでむくみきってる足を引きずってシカゴ空港1番ターミナルの中を徘徊してみる。
なかなかきれいで、しかも係員はみんな親切だ。リュックを背負った田舎者がキョロキョロしながら歩いていると、「Hey,
How are you ?」と声をかけてくる。うん、きっと迷っていると思われているのだ^^;)安心しとくれ。
Unitedにチェックインを済ませて搭乗窓口に行ってみると、UA(United
Airlineの事ね)の出発係の人がえらい機嫌が悪い。
「Check-in
Please」と言ってチケットを差し出すと、何か言いたげな顔をして「ブチッ」とチケットをもぎってくれる。
なんだろうと思っていたが、案内板を見て納得した。
軒並み、ボストン行きの飛行機が「DELAYED」「CANCELED」になっていたのだ。
ロビーのテレビのCNNも「ボストンでは大雪が降って、除雪作業のために飛行機のダイヤに大きな乱れが出ています」とニュースを流していた。……はあ……。
これはしばらくかかりそうである。もともとあと1時間ぐらい余裕があったが、10:30分の出発予定が11:00→12:30→13:00→13:30とドンドン遅れていく。カウンターのウーピーゴールドバークみたいな係りのお姉さんに話し掛けても「そんな事聞かれても私にもわからないよ」みたいな顔をされてしまった。
まあ、チケットを切ってしまったので外にも行けず、仕方ないから搭乗口付近のモールをぶらつく。
スターバックスコーヒーでスモールサイズのコーヒーを頼むと12ozカップでホットコーヒーが出てきた。物凄くHOTだ。12ozは約300mlぐらい。日本で120円のジュースの太缶ぐらいの量がある。いやいや、アメリカだね。
50セントのドーナッツも片手に余るぐらいの量がある。しめて1.6ドル
それでもまだ飛行機は飛ばないので、マクドナルドに行ってチーズバーガーを買ってきて食べる。
よくアメリカに行った人が「アメリカではMcのハンバーガーまで大きい」とよく言うが、元・Mc社員の私が断言します、
「チーズバーガーの大きさは、パンも肉も日本と変わりません!!」
もちろんドリンクの大きさとポテトの量は2倍ぐらいあるけど。
幸いな事に13:30と言われていたのに、13:00にはボストン行きの510便が飛ぶ事になった。
前の便のキャンセル客や、他から回されて来ている客のおかげで、510便は満席のようだ。
モヒカン刈りのように見えるまで短く刈り込んでいるチャーリーブラウンみたいな小太りなお兄さんと、ちょっと垢抜けないブルース・ウィリスそっくりさんが機内であわただしく人を捌いている。捌いているといっても別に急かすわけでもなく、客の荷物を上げたり、気軽に話し掛けたりしている程度で、特に急いでいる感じは見受けられない。そういえば空港の待合ロビーで飛行機の遅れを騒いでいたのは全部東洋人だった。さすがアメリカ人、細かい事は気にしない。
やっと飛行機がボストンに向けて飛び立った。ここから約2時間のフライト。
機内ではベルトのサインが消えるとさっきの小太りの陽気なお兄さんと、背高のっぽのお姉さんがワゴンでドリンクと昼食を配り始めた。メニューはチーズバーガーとポテトチップス。う~~ん、アメリカン。もちろん、日本の「ハンバーガー」と呼ばれるものの2倍ぐらいの体積がある。さっき私はチーズバーガーを食べたばっかりなのに……。でもおいしいので結局食べてしまう。
アメリカの国内線の雰囲気を一言で例えてしまうと「バス」なんだよね。
日本だと「飛行機!」っていうと、なんだかエライ肩肘張って乗らなくちゃいけないような特別な乗り物のような気がするけど、アメリカではもっと気楽なんだよね。なにより、機内が人々の話し声でうるさいし^^;、スチュアードの事を「Hey
!」って呼んじゃうし、それに「What up,
man?」って答えちゃうし。JALであんな応対したらクレームガンガンだろうな。
やがて今日(Tsubasa時間)2度目の夕暮れとなって、ボストンの町並みが見えてきた。
海岸線を一旦東に通り越し、海の上から徐々に高度を下げていく。時々微調整をするが、海の上でターンした後は、ひたすらまっすぐまっすぐ降りていく。海の上に降りていくようなアプローチで海面激突寸前で急に地面が現れる。結構速いスピードでタッチダウンする。先ほどのチャーリーブラウンが手を叩いて歓声をあげる。「ウォーー!」。野球の試合でヒットでも出たみたいだ。
夕闇に暮れかけているボストン空港にやっとたどり着く事ができた。まだ時間は4時ぐらいなのにほとんど真っ暗である。
ホテルに到着が遅れた事を伝え、レンタカー屋さんへと急ぐ。
本牧埠頭のモータープールみたいな駐車場の中にポツンと事務所が立っている。近づくと意外にでかい建物だった事に気づく。遠近感がいかれてしまっているらしい。
カウンターで予約確認番号を言って、何とか借りる事ができた。「あなたの車は外に出て向こう側にあるから」「Thank
you!」と出てきたのはいいが、もらった紙に書いてある字が汚くて判読不能……。
仕方なく送迎バスのお兄さんをとっ捕まえて、どれが私の車か聞く。
彼曰く、「この列のどれか」。はあ?
彼が言うには、この駐車場のこのクラスの車の並んでいるこの列から自分の気に入った車を持って出口のゲートに行って決定するシステムだったらしい。よく見たらどの車もキーが刺さりっぱなしだ(^^; おいおい、そんなシステムだって聞いてないぞ。そういえばカウンターで受付をしたときにかぎを渡されないからおかしいとは思ったんだけどね。
なんとか左ハンドルの慣れない車で右側通行しながら空港の出口に向かう。
ボストン空港は工事中で、しかも日が暮れてしまったのでかなり暗い。空港内を一方通行の環状線が走っているのだが、結局出口にたどり着くまでにそれを2周する事になった。
空港から海底トンネルを抜けて、ボストン市内へ。ビルの明かりやライトアップされていた建物がとてもきれいだった。
それが正直なところの第一印象だ。ニューヨークとまでは行かないんだろうが、とても美しくて感動してしまった。
ただ、運転に必死だったので写真をとるわけには行かなかったのだが……。今度とってこよう。
ボストン市内からホテルのあるミルフォードという郊外の田舎町までハイウェイを飛ばす。
93号線から90号線「マス・パイク」を一路西へ。西へ。西へ。
いいかげん、本当なのか?というぐらい西に向かう。本当に不安になるぐらいまっすぐ西。
アメリカのドライブは自信家でなければ勤まらない。
途中に2箇所料金所があって、無人だった。50セントを無人の投入口に放り込んで、みんなガンガン走っていく。
小銭をあまり持っていない私は、1つ目の料金所は何とか25セント玉(クウォーター)2つを見つけてなんとか料金受けに放り込んだが、2回目の時はもう小銭がなかったので、財布の小銭を全部放り込んで逃げてきてしまった。(ごめんなさい!!)でも別にゲートがあるわけでもなく、ブザーが鳴るわけでもなく、とりあえず現在まで捕まらずにいる。
いいかげん不安になった頃に495号線との交差に差し掛かる。
2マイル前から出口の予告看板は出ているのだが、決して「親切」とは言いがたい。日本のような「〇〇行き」みたいな地図までついた看板を期待していると混乱する事になる。事前に何番出口から自分は降りるべきなのかしっかり把握しておく必要がある。
ここでマス・パイクを降りて90号線に乗り換える。ボストン市内を出た先のマス・パイクも495号線も、ぜんぜん街灯がない!
えらい暗い。しかもレンタカーの分際でフロントガラスがやけに汚れていて、前が良く見えない。全体は約80マイル/h(150キロぐらい?)でかっ飛んでいる。しかもみんなハイビームだ。
まさに命がけのドライブだ。
目的のホテルは495を降りてすぐに見つけることができた。やれやれ。ここまでストレートに来る事ができたのは、全て会社の同僚の皆様の情報のおかげです。感謝感謝!!
チェックインを済ませ、ホテルのレストランで夕食を摂る。
ボストン名物「Samuel Adams」で一杯。わりと苦くてでも飲みやすいビールである。これも会社の情報^^;
いいかげんに「物量攻撃」にさらされるのは疲れすぎている。サラダとパンを食べて寝る。
部屋はダブルベットが2つ……じゃなくて、シングルベットが2つ。でかいんだってば!!
部屋全体は多分私のアパートの全体(2DK)と同じぐらいの面積がある。やたらと広いユニットバスの他にはベッドルームだけなのだが、結構居心地はいい。
窓の外には隣のホテル(と、言っても300mは離れている)と、なだらかな丘が見える。駐車場には雪がいっぱい残っている。
雪国の常識として、冬の夜中のサイドブレーキは厳禁だ。明日の朝に車に乗りたければ。
ボストン空港に近づいた上空から見たときも思ったのだが、どこか冬の北海道の景色と似ている。
寒さ加減も同じぐらいだし、なんだか親しみがわく。
そんなわけで、明日からの研修のために寝るのであった。
あ~~~、1日長かった。