何の断りも無く「ブルーマンデー」は当たり前のようにやってきた。
研修もあと5日。頑張らねば。しかし昨日の疲れもあって異常に眠い。

と、思っていたら隣の席でLennyが舟を漕いでいる。最後には辛抱たまらずグゴゴといびきをかいてはその音でハッと目を覚ましている。
一同苦笑するばかりだ。
講師もあんまり怒る気にならなかったらしく、「コーヒーが必要なようだな」とBreakになった。^^;

昼飯を食って外に出てタバコを吸っているとみぞれのような雪のようなものがポツポツと降ってきた。
土曜日にも夜に雪が降ったが夜半には止んでいた。日中暖かかった事もあってほとんど積もらなかった。
今回もそんなもんだろうとタカをくくっていた。
何より、朝駐車場に停まっている車のフロントガラスが不思議と凍っていなかったので、「暖かいんだな」と判断して、今日はセーターを持ってこなかったぐらいだ。

が、午後のBreakの時に再び外に出ると、さっきの中途半端なみぞれ雪は誰が見ても文句無しな雪になっていた。
おまけに既に積もり始めている。うっすらなんてものではない。明らかに世界の「黒」の部分が減っている。

「おいおいおい♪」ぐらいに私は突然の雪に楽しくなっていた。
講師の先生も「Oh Let it snow, Let it snow, Let it snow♪」と歌っている。ちょっと楽しいらしい。

雪慣れした人々は次々に私に声をかけてくる。
イギリスから来た人、ベルギーから来た人、カナダから来た人、地元に住む講師と助手、最後にはシカゴから来たLennyも。
みんな口をそろえて「気をつけて運転して帰れよ。絶対に10マイル/h以上出すなよ。ゆっくりな！」と念を押す。
「OK, OK ! I'll take care. No Problem. Thank you!」と気楽に返事をしていたが、研修が終わって外に出てみて事の深刻さが良くわかった。

まず、外に出ると駐車場の車が2回りほど大きくなっている。
正確にいうとすでに「雪だるま」になっている。全体にはうっすら、特に上を向いている面には15センチぐらいの雪が積もっている。車が良くわからなくて、同じ色の他人の車にキーを差し込んで回らなくてちょっとあせる。

フロントガラスの雪はワイパーぐらいでは落ちない事は明らかだ。ワイパーが動くかどうかさえ怪しい。
Lennyがさっき「ブラシがどうのこうの…」と言っていたのを思い出した。この事だったのか……。

まあ今更考えていてもしょうがない。
いつもフロントガラスの氷を落とすのに使っているヘラで雪を掻き落としていく。15センチの雪はフロントガラスぐらいの面積があると結構な量になる。
サイドガラスとリアガラスの雪を落として、反対側のサイドガラスの雪を落として、さっき落とした側のサイドガラスに戻ると既に雪が積もり始めている！！
ヘラぐらいでは埒があかない。もうちょっと雪がひどかったらお手上げになるところだった。


なんとか雪かきできた車内から……。


何とか走行可能なぐらいに雪を落とし終わると、車内の暖房を最大にしてとりあえず窓の雪は溶かす事に成功する。
どれぐらい危ないのか試すために駐車場の空きスペースで急発進・急停車をしてみる。
ABS（アンチロックブレーキングシステム）の作動した事を表すハンドルのバイブレーションが作動する。
5mぐらいの加速でもズルズルズルーとすべる。これはスピードを出すなと言うわけだ。

慎重に、本当に10マイル以上スピードを出さないようにして会社の丘を降り始める。
後ろにはあっという間に渋滞ができるが、そんな事に構っていられない。こんな地球の裏ッ側で死にたくない。
それでも地元マサチューセッツ州ナンバーをつけている車も20マイル以上は出していない。

何とかふもとの町まで降りると交差点が大渋滞である。
いつものハイウェイ沿いの帰り道を渋滞の中10マイルで進む。
途中でさっき私を抜いていったニュージャージーナンバーの黒いスポーツカーが路肩でスタックしている。
ざまあみろ！

いつもなら10分で帰れる道を30分近く費やして何とかたどり着き、安堵に胸をなでおろす。
今日は帰ってこれたけど、明日出かけるのが大変だろう事は容易に想像がつく。
雪下ろしに15分、研修会場まで30分。3マイル足らずに45分の計算になる。
もちろんバスも電車もない。
いざとなったらLennyに送ってもらうしかないな……。

部屋に入ってテレビをつけると、軒並み衛星放送のチャンネルは「Searching for satellite signals」になっている。
どうやら屋根のパラボラアンテナにも相当の雪が積もっているらしい。地上波の放送もかなり映りが悪い。
仕方無しに地元のニュースチャンネルを見ているとニューイングランド地方はどこも雪・雪・雪ならしい。
明日も降るらしい。
このまま降り続いて出発が遅れるような事にでもなったらかなりブルーである。
さすがにそこまでは行かないだろうが……。

「雪国」の皆様、ご苦労様です。