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2001年2月8日木曜日(EST) [出張19日目:Milford, Boston]


「久々の日本人」

今日は日本から会社の同僚がやってくる。
正しく言えば私の上司になのだが、2月の初日付けで入社した人なので私は顔を見たことがない。
研修から戻って部屋の留守電を見るとメッセージが入っていた。同じホテルに泊まっている。
名前は聞かされていたが、男でも女でも通用する名前なので「エスコートしろって命令されているから女かもね」とささやかな期待を持ていたが見事に打ち砕かれた(爆)

留守電にあった部屋に内線をかけるが話中だ。どうやらパソコンをつないでメールでも読んでいるらしい。
何度か試しているうちに留守電に繋がってしまった。
英語の早口な自動応答メッセージが流れたので、反射的に、

「Hi, This is Tsubasa. Thank you your calling. If you receive this, Call me back please. Thank you.」

見たいな事を言って電話を切ってしまった。
おいおい、相手は日本人なんだってば!!
習慣とは恐ろしい。

先週会社から国際電話がかかってきたときもそうだったが、海外で日本人一人で生活していて、突然英語で話し掛けられてもとっさに日本語で答えるのは難しい。
頭が切り替わらないのだ。ほんと。嘘だと言う人は是非試してくれ。
こっぱずかしいことこの上ないが……。

やがて向うから内線がかかってきた。18:30にフロントで待ち合わせをして、食事にいくことにした。
フロントで顔合わせをして、先週私が連れて行ってもらったOutbackステーキ屋さんに連れて行った。

ステーキ屋さんでいろんな話をした。
彼は以前イギリスに駐在していたことがあり、英語には不自由はないそうだが、アメリカの食事とか生活とかそういうことにはあんまり経験はなかったようだ。
彼もOutbackの食事の量の多さに驚いていた。

久々に日本語で意思の疎通をすることができた。
なんて楽なんだろう!!
頭の中で考えたことがそのままそのニュアンスで口に出てくる。この当たり前の事が当たり前にできる快感は他のものでは例え難い。
強いて言えば、厚手の手袋をしたまま背中を掻いていたのを、他の人に素手で痒いところをズバリ掻いてもらったような感じだ。
今まで「何か言おう」と思ったら、まず言いたいことを明らかに整理して、文型を考えて、単語を探して……という思考回路を経なくていいからダイレクトに話している実感がありありとあるのだ。
ちっとも話すことが苦痛ではない。

よくよく振り返ってみると、いつしか自分がいつのまにか会話恐怖症に陥っていたことを発見した。
自分の言いたいことをどこかで抑制していたのだ。
最初は「間違っていてもむちゃくちゃでも良いから、とにかくガンガン話そう」と思っていたのだが、英語を聞くことに慣れると「正しく、自分の思っていることを話さなければ」という強迫観念が生じ、自分の語彙力のなさや文法的な間違いを恐れるようになっていた。

やっぱり疲れていたのだと思う。
何事にも「休み」というものは必要なんだと思った。
「気合い」とか「勢い」とかにはおのずと限界がある。
それが途絶える前に苦痛と感じなくなるまでに追いつく「基礎」がないとかえって荒療治は最終的にマイナスに作用する可能性を含んでいる。

自分を含めたみんなに、「無駄と余裕は人間の人間たる所以(ゆえん)である」の金言をもう一度薦めたい。


さてさて、明日の朝は3週間お世話になったこのホテルと、研修場を去らなければいけない。
なんだか名残惜しいな……。


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